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会社都合で従業員の労働条件を変更する際のポイントとは?

新型コロナウイルスの流行や、物価の上昇など、昨今の社会情勢のもとでは、会社の存続をはかるために、人員の削減をおこなったり、賃金の減額等の労働条件の変更を検討している経営者の方も少なくないかと存じます。

もっとも、一般的にみて、労働者は使用者に比して弱い立場にあるため、労働基準法や労働契約法をはじめとする法律は、労働者に手厚い保護を与えています。

したがって、会社による一方的な労働条件の変更は認められておらず、労働条件を変更するためには高いハードルを越える必要があります。

以下、労働条件を変更するための方法や変更をスムーズに進めるためのコツについて解説していきます。

労働条件に関する規律について

労働条件を変更する方法についての解説を行うに先立ち、労働条件に関する規律について整理します。

労働条件を規律するものとしては、法令・労働協約・就業規則・労働契約が挙げられます。

 

  • 法令

労働条件を規律する法令としては、国籍や身分にかかわらず全労働者の適切な雇用を守るための法律である「労働基準法」や、労働契約の内容決定や変更に関するルールを規律した「労働契約法」が挙げられます。

労働条件の規律として、法令はもっとも強い効力が強く、法令に違反する就業規則や労働協約、雇用契約は無効となります。

 

  • 労働協約

労働協約とは、賃金・労働時間安堵の労働条件や、団体交渉・組合活動などの労使関係に関するルールについて、労働組合と使用者が書面にて取り交わしたものを指し、法令についで強い効力を持っています。

 

  • 就業規則

就業規則とは労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。

就業規則は労働基準法第89条第1項により「常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、行政官庁に届出なければならない」と規定されています。

 

  • 労働契約

労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意した場合、労働契約が成立します。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないものとされていますので(労働基準法15条1項)、雇用契約の際に交わすことになる労働契約書や労働条件通知書には、個々の労働契約において定められた労働条件が明示されることになります。

労働条件を変更するためのポイント

労働契約法8条を参照すると、労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるものとされています。

同条からは、労働者の同意なく労働条件を不利益に変更してはならないという「不利益変更禁止の原則」を導き出すことができ、労働条件の不利益変更を行うためには、①労働者の個別の合意を得る、②就業規則の不利益変更を行う、③労働協約を締結して不利益変更を行う必要があります。

以下、労働条件を変更するためのポイントについて解説します。

 

  • 労働者の個別合意を得る

まずは、労働者全員から、労働条件の不利益変更に関する個別合意を得ることが考えられます。

労働者の同意を得るにあたっては、労働者の理解を得るために、労働条件を行わざるを得ない合理的理由についてきちんと説明を行い、また、同意の有無に関する後々のトラブルを防止する観点から、労働条件の不利益変更に同意したことを証明する同意書を取り付けておく必要があります。

なお、勤務する労働者の数によっては、個別的な合意を得ることが現実的でない場合も想定でき、このような場合には、後述する就業規則の変更や労働協約の締結を検討する必要があります。

 

  • 就業規則の変更

個々の労働者の同意を得ることが難しい場合、まずは就業規則の変更が考えられます。

就業規則の不利益変更に関しては、労働契約法10条に規定が存在します。

 

(労働契約法10条)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

就業規則変更により労働条件を不利益に変更し、かつ、就業規則の変更が有効である場合、労働条件の変更に同意していない労働者に対しても、変更後の就業規則が適用されます。

とはいえ、労働条件の不利益変更は、社員のモチベーション低下につながる可能性があることは否定できませんので、一人でも多くの労働者の納得を得られるように、以下のような方策を実施することが望ましいと言えます。

 

・説明会等を実施し、客観的な経営資料等に基づき、労働条件変更が必要な理由を説明する

・就業規則の変更に伴う影響を抑えるため、緩和措置を実施する

・一部の従業員にのみ不利益が発生する場合には、調整手当等を支給する

 

  • 労使協定の締結

個々の従業員の同意を得ることが難しい場合、労使協定の締結により労働条件を変更することも考えられます。

この方法による場合、労働条件の変更に伴い使用者と労働組合が協議を行い、合意の内容を記載した書面を作成した上で、双方が署名または押印を行う必要があります。

労使協定の締結により労働条件を変更する場合、労働条件の変更に同意していない労働者に対しても労働協約の効力が及びますが、就業規則の変更とは異なり、非組合員には効力が及ばないことには注意が必要です(もっとも、労働組合法17条を参照すると、労働者の3/4以上が労働組合に加入している場合、企業との間で労使協約を締結すると、非組合員にも効力が発生するものとされています)。

なお、労働協約の締結による場合であっても、就業規則の変更と同様、個々の労働者が納得できるような説明を行ったり、措置を講じたりする必要があります。

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米重 浩史弁護士

米重 浩史Hiroshi Yoneshige

私は16年間、上場企業の法務部・経営管理部に勤務しており、様々な法律問題と契約業務に携わっていました。

会社員時代の企業側の視点・感覚なども活かしながら、ご相談者様の立場に立ち、早期解決を目指してアドバイスいたします。

少しでも不安なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。

所属団体

  • 東京弁護士会

経歴

  • 2001年 東京大学法学部卒業
  • 2001年 上場会社勤務(2017年まで)
  • 2017年 司法試験合格(司法試験予備試験経由)
  • 2018年 弁護士登録
  • 同年   「米重法律事務所」開所

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