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配偶者居住権とは?概要やメリット・デメリットなどわかりやすく解説

平成30年の民法改正によって、配偶者居住権と呼ばれる制度が確立しました。
本ページでは、配偶者居住権という制度について詳しく解説をしていきます。

 

◆配偶者居住権とは
法務省によると、配偶者居住権とは「残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合で、一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなった後も、配偶者が、賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利」とされています。(法務省のリンク: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00028.html)

残された配偶者は、被相続人の遺言や、遺産分割協議によって、配偶者居住権を取得することができます(民法1028条1項1号、2号)。
もっとも、対象となる建物が、被相続人の生前に配偶者以外の方と共有して使用されていた場合には、配偶者居住権を行使することができません(民法1028条1項ただし書)。

配偶者居住権という権利は、第三者に譲渡したり、所有者に無断で建物を賃貸することはできません。

 

◆配偶者居住権のメリット


①現在住んでいる家に住み続けられる
夫婦2人で持ち家に住んでいた場合には、被相続人が亡くなった後に、残った配偶者がそのまま持ち家に住み続けるのが一般的となっています。
しかしながら、子ども夫婦などと同居をしている場合で、子ども夫婦との仲が悪い状況であれば、家から出ていくように言われてしまうことがあります。
このような場合に、配偶者居住権によって、残った配偶者は引き続き家に住み続けることができるため、住まいを追われるということがなくなります。

 

②財産の取り分が減らない
遺言等がない限りは、財産は配偶者が2分の1、残りの2分の1を子どもが等分に分ける決まりになっています。
しかしながら、不動産のような資産価値が高いものを相続してしまった場合には、その他の預金などの財産の取り分が大幅に減ってしまいます。
例えば亡くなった夫の財産が7000万円(自宅3000万、預金4000万)となっていた場合には、妻が自宅を相続すると、現金で相続することができるのが、相続分3500万円から自宅の価額3000万円を差し引いた、500万円のみになってしまいます。

しかしながら、配偶者居住権であれば、不動産の所有権を取得するわけではなく、あくまで居住権を相続することとなります。
居住権の価値は不動産の所有権の価値よりも安く計算されることとなるため、より多くの預金を相続することができるようになります。

 

③代償金を支払う必要がない
先ほどの例であれば、不動産の価値が配偶者の相続分よりも小さいものであったので、代償金の発生はありませんでした。
代償金とは、不動産の価値が配偶者の相続分よりも大きい場合に、超過した部分について、他の相続人に対して支払うお金のことを指します。

例えば先ほどの例を用いると、自宅が4000万円で預金が3000万円という財産の内訳だった場合には、配偶者の相続分は3500万円ですので、500万円分が超過していることになります。

しかしながら、配偶者居住権であれば、所有権の価値よりも安く算出されるため、本来の不動産の価値よりも安い金額が算定された場合には、超過が発生せず、代償金を支払う必要がなくなる可能性があります。

 

◆配偶者居住権のデメリット


①不動産の譲渡・売却ができない
配偶者居住権は、家に住む権利を得られるに過ぎないため、不動産所有権のように、物件を売却や譲渡などによって処分をすることができません。
また、不動産の所有権を持つ人(子どもの場合が多い)であれば、譲渡や売却をすることができますが、配偶者居住権が設定されている以上は、第三者が不動産を利用することはできません。

特に問題となるのは、配偶者居住権を持つ人が、認知症となり病院や施設などに入ることになった場合です。
配偶者居住権は、期間を定めなければ、配偶者が亡くなるまで権利が有効となるため、配偶者が当該不動産に住まなくなった場合であっても、居住権が消えることはなく、売却や譲渡をしても、第三者が利用できないままとなります。

そして、認知症になった方に、居住権の放棄をさせることは非常に難しくなっています。

 

②所有者の税負担が大きい
配偶者居住権を取得した人は、不動産に対する必要費を負担しなければならず、この必要費の中に固定資産税が含まれています。しかしながら、これはあくまで建物に対する固定資産税のみであり、敷地の固定資産税については不動産所有者が負担しなければならない可能性が高くなっています。

 

③法律上の夫婦のみしか利用することができない
あえて婚姻を結ばず、事実婚を選ぶという方たちも一定数いらっしゃいます。
このような内縁の夫や妻には相続権が与えられません。
そして配偶者居住権はあくまで被相続人の配偶者が利用できるというものなので、事実婚や内縁配偶者は配偶者居住権を利用することができません。

 

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米重 浩史弁護士

米重 浩史Hiroshi Yoneshige

私は16年間、上場企業の法務部・経営管理部に勤務しており、様々な法律問題と契約業務に携わっていました。

会社員時代の企業側の視点・感覚なども活かしながら、ご相談者様の立場に立ち、早期解決を目指してアドバイスいたします。

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所属団体

  • 東京弁護士会

経歴

  • 2001年 東京大学法学部卒業
  • 2001年 上場会社勤務(2017年まで)
  • 2017年 司法試験合格(司法試験予備試験経由)
  • 2018年 弁護士登録
  • 同年   「米重法律事務所」開所

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