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公正証書遺言の執行者の選任が必要なケースと権限について解説

公正証書遺言は、公証人が作成するため形式や内容の不備が少なく、効力が高い遺言の形です。

しかし、遺言の内容によっては「遺言執行者」の選任が必要になることがあります。

今回は、公正証書遺言で遺言執行者が必要となるケースと、その権限をみていきます。

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実行するための手続きを行うひとです。

民法第1015条によれば、「相続人の代理人」ではなく、独立した法的地位を持つと解釈されます。

遺言執行者は遺言書で指定されることもあれば、相続人や利害関係人の申立てによって家庭裁判所が選任する場合もあります。

遺言執行者の選任が必要なケース

公正証書遺言であっても、以下のような内容を含む場合には遺言執行者が必要です。

 

  • 相続人の廃除やその取消しを記載している場合
  • 未成年の認知をしている場合
  • 遺産分割方法を具体的に指定している場合
  • 特定のひとに特別受益や遺贈を行う場合
  • 寄付や公益目的の遺贈を行う場合

 

これらは法的手続きや第三者とのやり取りが必要になるため、相続人だけで進めるのが難しい可能性があります。

遺言執行者の権限

遺言執行者には、遺言の内容を実現するための強い権限が法律で認められています。

遺贈義務者としての対応

遺言で遺贈があるとき、遺言執行者が選ばれていれば、その遺言執行者が「遺贈を実行する当事者(遺贈義務者)」として動く扱いになります。

受遺者と直接やり取りして、目的物を引き渡したり、権利移転のための手続きを進める役回りです。

遺産分割方法の指定に基づく「対抗要件」の整備

「自宅は長男に相続させる」のように、遺産分割方法を遺言で指定するケースでは、権利は原則として相続開始時に受益相続人へ移ります。

ただし第三者に対抗するには、登記や名義書換などの対抗要件を整えなければなりません。

執行者は、その手続を代理・主導できるとされています。

預貯金の払戻し・引渡し

遺言で「〇〇銀行の預金はXへ遺贈」や「預金は長女に相続させる」などと預貯金が対象として特定されている場合があります。

遺言執行者は、その預貯金を払戻し、受益者へ引き渡す権限を行使できます。

まとめ

公正証書遺言は、信頼性が高い形式ですが、内容によっては遺言執行者の選任が必要です。

遺言執行者には、相続人の同意なしで財産管理や名義変更などを行える強い権限があります。

遺言に法的手続きが必要な事項が含まれる場合や、相続人間での調整が難しい場合には、あらかじめ遺言書で執行者を指定するのが重要です。

法的に不安な点があれば、弁護士などの専門家に相談してください。

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米重 浩史弁護士

米重 浩史Hiroshi Yoneshige

私は16年間、上場企業の法務部・経営管理部に勤務しており、様々な法律問題と契約業務に携わっていました。

会社員時代の企業側の視点・感覚なども活かしながら、ご相談者様の立場に立ち、早期解決を目指してアドバイスいたします。

少しでも不安なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。

所属団体

  • 東京弁護士会

経歴

  • 2001年 東京大学法学部卒業
  • 2001年 上場会社勤務(2017年まで)
  • 2017年 司法試験合格(司法試験予備試験経由)
  • 2018年 弁護士登録
  • 同年   「米重法律事務所」開所

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